研究 Research

臨床研究について Clinical Research

肺高血圧症・静脈血栓

慢性血栓塞栓性肺高血圧症の迅速・簡便診断を目指した
胸部X線動態画像/肺循環解析プログラムの開発

慢性血栓塞栓性肺高血圧症は肺動脈に器質化した(古くなって線維化した)血栓による閉塞・狭窄によって肺の血流が障害される致死的疾患です。この疾患の診断には肺循環の検査:肺血流シンチグラムが不可欠ですが、大型の検査で実施できる施設は非常に限られるほか、放射性核種を用いるため、昨今の原子炉の老朽化等で核種の供給が不安定となってきています。
そこで当科ではコニカミノルタ株式会社と放射線科とともに慢性血栓塞栓性肺高血圧症の世界初となる肺循環解析プログラムの開発を進めてまいりました。
現在、開発段階は第3相治験の準備段階にあります。

Yamasaki Y. New Path and Remaining Issues in Clinical Applications of Dynamic Chest Radiography.
Circ J. 2023 Dec 25;88(1):168-169. doi: 10.1253/circj.CJ-23-0853. Epub 2023 Dec 6. PMID: 38057080.

世界最大級の慢性血栓塞栓性肺高血圧症レジストリ
(CTEPH AC レジストリ、JAPHR4群)

慢性血栓塞栓性肺高血圧症は希少疾患であり、単施設でのデータ蓄積だけでは新たな診断、治療に結びつく知見を得ることが難しいため、当科では2018年に慢性血栓塞栓性肺高血圧症の全国レジストリを構築し、疾患データの蓄積を開始しました(日本肺高血圧肺循環学会が後援)。レジストリ開始時には日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け、その後はNPO法人JAPHRとして独立するエコシステムを確立しています。
現在も慢性血栓塞栓性肺高血圧症の貴重なデータ蓄積を継続しています。このCTEPH ACレジストリのデータは全国のアカデミア、製薬企業などに提供されており、新たな知見や医薬品開発に利用されています。

急性肺血栓塞栓症における簡便・迅速・低被ばくな
胸部X線動態画像/肺循環解析プログラムの開発

当科では慢性血栓塞栓性肺高血圧症における胸部X線動態画像/肺循環解析プログラムの開発が第3相治験まで進んでいますが、この機器の守備範囲を広めるためにCommon diseaseである急性肺血栓塞栓症にも本機器が有効な可能性を追及しています。
症例単位では簡便・迅速、低被ばくで急性肺血栓塞栓症を診断できることが示されており、今後、大規模な症例で検討を進めていく予定です。

妊娠中に急性肺血栓塞栓症を発症した症例

治療前
治療後

運動負荷心臓MRIを用いた動的右室機能の解明

当研究室ではPH患者に対して心臓MRI(CMR)を撮像し、得られた臨床データから生理学的疑問に迫る研究も行っています。PAH患者において三尖弁逆流を定量的に評価し、三尖弁逆流が予後と右室機能障害と関連していることを報告しました(Yoshida K, et al. Eur Respir J. 2024)。また近年運動時の血行動態評価が重要視されており、ガイドラインにおいても運動誘発性PHと定義されています(Humbert M, et al. Eur Respir J. 2022)。
当研究室は放射線科と連携してMRI対応運動負荷エルゴメーターをMRI室に配備し、様々な心血管病を有する患者に対して運動負荷CMRを行い、安静時だけではわからない動的な心機能障害に迫る研究を行っています。現在慢性血栓閉塞性肺高血圧症(CTEPH)に対する運動負荷CMRの前向き観察研究が進行中です。

MRI対応運動負荷エルゴメーター(Lode社)を
当院MRI室に配備
健常者とCTEPH患者における
運動負荷心臓MRI

製薬企業主導の治験、他施設が代表の医師主導治験

当科には豊富な肺高血圧・静脈血栓症の症例と経験豊富な診療スタッフが在籍しているため、さまざまの治験を実施しています。

  • アベラシマブ:第XI因子阻害薬、担癌患者の静脈血栓症 ASTER試験 NCT05171049
  • セラルチニブ:PDGF受容体阻害薬、肺動脈性肺高血圧症 PROCERA試験 NCT05934526
  • ソタテルセプト:アクチビンシグナル阻害薬、肺動脈性肺高血圧症 MK-7962-020試験 NCT05818137
  • トレプロストDPI吸入:プロスタサイクリン 肺動脈性肺高血圧症、間質性肺疾患に伴う肺高血圧症
  • サトラリズマブ:抗IL-6受容体抗体薬 肺動脈性肺高血圧症 jRCT2031210626

アイゼンメンジャー症候群を含む、肺血管拡張薬抵抗性未修復短絡(ASD, VSD, PDA)を伴う肺動脈性肺高血圧症に対する肺血管拡張薬を用いた診療ガイドラインに基づく標準治療を対照群としたソタテルセプト追加治療の有効性を検討する非盲検無作為化比較試験(SuMILE試験)

先天性心疾患に伴う右左短絡(心房中隔欠損〈ASD〉、心室中隔欠損〈VSD〉、動脈管開存〈PDA〉)により肺動脈圧が高度に上昇し、不可逆的な肺血管病変を呈するアイゼンメンジャー症候群(Eisenmenger syndrome)は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の中でも極めて重症で、既存の肺血管拡張薬による治療効果が限られています。ソタテルセプト(Sotatercept)は、アクチビン/TGF-βシグナル経路を抑制し肺血管リモデリングを改善する新しい作用機序の分子標的薬です。
本研究(SuMILE試験:jRCT1071250069)は、「アイゼンメンジャー症候群を含む、肺血管拡張薬抵抗性未修復短絡(ASD, VSD, PDA)を伴う肺動脈性肺高血圧症に対する、ガイドライン推奨薬物療法(GDMT)を対照としたソタテルセプト追加治療の有効性を検討する非盲検無作為化比較試験」です。全国11大学が参加する医師主導型多施設共同試験でありソタテルセプトの有効性・安全性および遺伝学的背景との関連を検証し、未修復短絡型PAHにおける新たな治療選択肢の確立を目指しています。

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