基礎研究について Basic Research
血管研究グループ
主な研究プロジェクト
心血管病における酸化ステロールの役割の解明
冠動脈疾患を含めた動脈硬化性疾患の予防には、脂質管理、特にLDLコレステロール値の重要性が示されています。我々を含む研究グループは、心血管病の残余リスクの一つとして、コレステロールの酸化物である「酸化ステロール」に着目し、心血管病への関与を示してきました(JAT. 2012)。当研究室では臨床試験CuVIC Trialにおいて、冠動脈ステント留置術後の患者におけるスタチンへのエゼチミブ追加によりステント留置後の標的血管における冠動脈内皮機能不全が改善され、血清酸化ステロール値が減少すること、冠動脈プラーク退縮と血清酸化ステロールの関連を報告しました(ATVB. 2017、JAT. 2022)。またエゼチミブによる脂質低下療法は、プラーク侵食のウサギモデルにおいて自然発症の動脈粥状血栓性閉塞を減少させること(ATVB. 2018)、マウス虚血再灌流モデルにおいて、食事由来の代表的な酸化ステロールである7-ケトコレステロールが、単球/マクロファージを介した炎症を通じて、マウスにおける心筋虚血再灌流傷害を悪化させることを報告しました(Sci Rep. 2022)。最近では、7-ケトコレステロールが、心筋梗塞後リモデリングにおいてもマクロファージERストレスを介した炎症を通じて、病態を悪化させることを明らかにしています。
37(2):350-358. 2017
血管石灰化におけるマクロファージの役割の解明
血管石灰化は血管病の形成過程において、糖尿病などによる粥状動脈硬化形成過程として、加齢や慢性腎臓病では動脈硬化とは独立して生じる病態ですが、心血管死の高リスクと関連し、臨床では血管インターベンション治療を困難にする、喫緊の解決すべき医学的課題です。高血糖状態においては血管平滑筋細胞のTGF-βシグナルが活性化し、血管石灰化の主要な機序の一つである平滑筋細胞の骨芽細胞様分化が誘導されます。我々は動脈硬化進展過程の鍵となるマクロファージ由来の細胞外小胞を内包するmiR17-5pが、TGF-βシグナルを抑制し、過剰な刺激応答を負に調節し、病態における細胞機能の恒常性の維持に寄与している可能性を示しました(Sci Rep. 2024)。現在は慢性腎臓病患者の血管石灰化病変進展における単球/マクロファージの役割の解明に取り組んでいます。
動脈硬化性疾患・虚血再灌流傷害に対する新規治療法の開発
急性心筋梗塞の多くは、冠動脈に生じた動脈硬化性プラークの破綻と、それに続く血栓性閉塞が原因となり発症します。近年我々は高コレステロール血症を基礎に動脈硬化性プラーク不安定化・破綻を呈するマウスモデルを作成しました(Curr Opin Lipidol. 2013)。一方、急性心筋梗塞に対する標準治療として早期再灌流療法(プライマリーPCI)が実施されていますが、再灌流によって引き起こされる心筋虚血再灌流傷害は早期再灌流療法の治療効果を制限します。
- 我々はポリ乳酸・グリコール酸ナノ粒子や脂質ナノ粒子を応用したドラッグデリバリーシステムを駆使して、心血管病の炎症の鍵となる単球・マクロファージ、虚血心筋に低分子化合物、siRNA・miRNAを効率的に送達させることにより、新規治療の開発を目的として、動物モデルにおける基礎研究を行っています(Circulation. 2014, Cardiovasc Res. 2018, etc)。
- 大阪大学健康発達医学(中神啓徳教授)との共同研究で、炎症を標的としたワクチンの開発に取り組んでいます。