診療 Treatment
心不全
診療実績
心不全グループの年間入院は300例ほどで、約3分の1が急性心不全または心不全増悪の患者です。心臓移植実施施設(成人・小児)、植込型補助人工心臓(LVAD)実施施設(DT含む)に認定された重症心不全センターとして、西日本各地から患者が紹介されて来ます。心臓移植術実施件数は国内4位となり、LVAD植込術の実施件数も増加の一途であり、DT(destination therapy)としてのLVAD植込術の保険償還後はDT目的での患者紹介も増えてきました。それに伴い移植患者の検査入院、移植・VAD患者の合併症入院の比率も年々増加しています。
ECMOセンターが設置されていることから、当院での留置症例だけでなく他院において重症心不全や劇症型心筋炎のためECMO/IABP/Impellaを留置された症例の転院も多く引き受けています。多くの機械的補助循環(MCS)装着患者が常にICU/CCUにいる状態です。心臓血管外科、小児科、救命センター・集中治療部、医療スタッフと協力して重症心不全の診療の質向上に努めています。
慢性心不全診療に関しては、HErEF患者が多く、その中では拡張型心筋症、肥大型心筋症が多数を占めています。サルコイド―シス、アミロイドーシス、ミトコンドリア心筋症などの二次性心筋症患者も数多く診療しています。アミロイドーシスに関しては、ビンダケル/ビンマック導入認定施設であることから現在も紹介が増えており、これまでの心アミロイドーシス経験症例は200例近くに達しています。移植実施施設であることから心筋生検の年間実施件数も約300例と多く、心筋病理に注力しているのも特色です。
移植・VADだけではなく、心不全・心筋症センターとして関連病院・地域医療機関と協力して包括的な診療ができるように連携体制を構築して参ります。
アミロイドーシスとは
アミロイドーシスとは、構造異常を起こした前駆蛋白質がアミロイド線維を形成し、全身のさまざまな臓器に沈着することで機能障害を起こす疾患の総称です。前駆蛋白に対応して病型が分けられており、心機能障害を引き起こすのは主としてトランスサイレチン(ATTR)型、形質細胞腫瘍に伴う免疫グロブリン軽鎖(AL)型、関節リウマチなど炎症性疾患に伴うアミロイドA蛋白(AA)型です。
近年、高齢者の慢性心不全の原因としてATTRアミロイドーシスが少なからず含まれていることが明らかになってきました。新たな治療法により予後は改善しつつあり、早期診断・早期治療が重要とされています。高齢者の心不全(特に左室肥大を伴う)患者さんで、トロポニン高値、BNP/NT-proBNP高値、手根管症候群や脊柱管狭窄症、など一つでも合致すればアミロイドーシスを疑って精査をすることが大切です。心筋シンチグラフィー(99mTc-ピロリン酸)が診断に有用とされています。
当院のアミロイドーシス診療
当院では心アミロイドーシスの診療を重点的に行っており、特にトランスサイレチン型心アミロイドーシスに関しては日本循環器学会の疾患修飾薬導入施設の認定を受けています。2025年7月時点でビンダケル/ビンマック、ビヨントラ、アムブトラなどの疾患修飾薬の導入は145例に達しています。
以下に当院におけるアミロイドーシスの診断と治療の流れを示します。当院では病理部においてアミロイドタイピングのための免疫染色を自施設で行っており、検査部と協力して必要に応じて生検サンプルから質量分析を行うことも可能です。診断だけでなく、患者様の病態に応じて疾患修飾治療薬の導入、心不全薬物療法、不整脈治療、デバイス治療など包括的な診療を行なっています。
アミロイドーシス診療においては、疑うこと、見逃さないことが何よりも重要です。臨床徴候、心電図、心エコー検査等で疑われる場合はいつでもご相談ください。
アミロイドーシスが疑われる患者様については、当院にご紹介いただければ上記の診療の流れに沿って検査と治療の導入を行います。患者様が遠方にお住まいであったり、受診の利便性等を考慮して近くの医療機関をご希望の場合、以下に掲げる当科の関連病院(地域中核病院)にご紹介ください。また医局の関連に関わりなく多くの医療機関から患者さんをご紹介いただいていおりますので、ご相談いただければ速やかに対応いたします。必要に応じて当院と連携しながら精査や治療を進めます。
診断が確定している患者さんの遺伝子検査、難病申請、治療薬(ビンマックなど)の導入依頼にも対応しています。(導入認定医:橋本亨、藤野剛雄、松島将士、阿部弘太郎)
アミロイドーシスの診断・治療についてご不明な点がございましたら、九州大学循環器内科 橋本 亨までご連絡をお願いします。