沿革 History
教室の歴史
はじめに
九州大学循環器内科は昭和33年(1958年)に創立された九州大学医学部 心臓血管研究施設(Research Institute of Angiocardiology, Kyushu University Faculty of Medicine)を礎とし、「循環器内科」としては日本初となる昭和40年(1965年)の診療部門(九州大学医学部付属病院 循環器内科)併設、現国立大学法人九州大学の組織改編を経て現在の九州大学大学院医学研究院 循環器内科学および九州大学病院 循環器内科の組織に至っています。「教育」「臨床」「研究」のいずれも充実しており、日本における循環器医療を牽引しています。
中村元臣教授時代
昭和38年に中村元臣先生が初代専任教授に就任し、昭和40年4月より診療部門として循環器内科が併設されました。昭和54年10月には関連する施設として冠動脈疾患治療部(いわゆるCoronary Care Unit:CCU)が中央診療部門として九州大学医学部附属病院に新設され循環器疾患の救急医療に対応できる体制となりました。
当時、全国の国立大学でCCUを整備したところはなく、全国に先駆けての誕生となりました。更に昭和62年8月には心臓血管研究施設臨床細胞科学部門が開設され、昭和63年に金出英夫先生が初代専任教授に就任しました。これにより、心臓血管研究施設は、内科部門、外科部門および基礎研究部門を併せ持つ、心血管病に対する総合的な診療・研究施設になるに至りました。
研究面では、血管壁代謝、心筋代謝の研究を精力的に行い、動脈硬化の成因、冠循環、ことに冠動脈スパスムモデルの開発を進め、優れた研究業績は国内外で認められました。中村教授の下、心臓血管研究施設の創成期に多大な貢献をされた森博愛徳島大学第二内科教授のほか、ヒトアンギオテンシノーゲンを単離しその構造を初めて明らかにした荒川規矩男福岡大学第二内科教授、心電図を中心とする臨床研究を展開された黒岩昭夫産業医科大学第二内科教授、九州大学医学部に新設された医療情報部教授として野瀬善明先生など多くの人材が当教室から輩出されました。
竹下彰教授時代
平成2年9月1日には竹下彰先生が第二代の専任教授となり、本教室は新たな時代へと移り変わりました。平成12年度からは九州大学大学院重点化構想の流れの中で、心臓血管研究施設は教官の所属する九州大学大学院医学研究院と学生の所属する九州大学大学院医学系学府臓器機能医学講座と名称を改めました。
研究面では冠動脈攣縮に関する研究の他、心筋血流と心機能の関係を発展させるような研究を行ってきた友池仁暢山形大学医学部第一内科教授(平成13年6月からは国立循環器病センター病院長)、ヒトの血管内皮の働きを臨床的側面から研究した今泉勉久留米大学医学部第三内科教授、Computer Science Technology、特にシステム理論を用いて心臓の収縮弛緩能力と末梢血管との適合性を研究し、心不全の病態を明らかにしてきた砂川賢二国立循環器病センター循環動態機能部部長、平成8年に産業医科大学第二内科の黒岩昭夫教授の後を引き継ぎ、高脂血症が専門の中島康秀教授、アデノウイルスベクターを用いて世界に先駆けて血管壁に遺伝子導入をおこない虚血性心疾患治療の新展開を拓いた、上野光産業医科大学生化学講座教授、ランダム・エクセサイズ法という心筋虚血や、心予備能を判定できる方法を開発した樗木晶子九州大学医療技術短期大学看護学科生理学教室教授はじめ数多くの研究者に恵まれ自由な発想のもと研究は大きく実を結びました。
また、冠動脈スパスム、EDHF、冠動脈疾患遺伝子治療を下川宏明助教授らが、炎症免疫制御にターゲットをおいた遺伝子治療、治療的血管新生療法を江頭健輔講師らが、微小血管スパスムなどのヒトにおける冠循環の研究を毛利正博講師や平川洋次助手らが、心不全における活性酸素腫の役割を筒井裕之講師らが行い、大きな成果を報告しました。
砂川賢二教授時代
平成16年4月より、国立循環器病センター研究所部長を11年勤めた砂川賢二が、第3代専任教授に就任しました。また、同年9月には筒井裕之講師が北海道大学大学院医学研究員循環病態内科学教授として、翌年7月には下川宏明助教授が東北大学医学部循環器内科教授として輩出され、平成18年4月学内の循環器専門教室(循環器内科、心臓外科、第一内科)が一体となった九州初となる心臓病専門施設・ハートセンターが発足しました。
研究面では「循環の神経制御システムに介入するバイオニック心臓学の研究」を砂川教授が、「動脈硬化性疾患の分子病態解明を基盤とする分子細胞標的治療法の創製と臨床応用」を 江頭准教授が、「循環生理活性物質による血圧調節・交感神経制御の分子機構の解明」を講師廣岡が 、「心不全の成因、治療に関する研究」を助手井手が行いました。
また、今年度より新たに寄附講座として「先端心血管治療学講座」が開設され、主任研究者として市来俊弘准教授が就任し、主に「アンジオテンシンIIの血管への作用の分子機構と、アンジオテンシンII受容体の発現調節機構」について掘り下げた研究を行い、教室全体として、分子生物学から細胞生物学、生理学そして臨床研究と幅広い循環器内科医学の研究を網羅していることを生かし、社会に貢献できる研究開発を推し進めました。
筒井裕之教授時代
平成28年7月からは、北海道大学循環器病態内科学の教授であった筒井裕之が第4代専任教授に就任しました。
臨床においては多様化、高度化する循環器診療に対応し、九州における循環器病の “Center of Center” の役割を果たすべく「心不全」「虚血」「不整脈」「肺高血圧」「構造的心臓病」「成人先天性心疾患」を柱とした6つの診療グループ体制とし、専門性の高い6つのグループを構成することで広く疾患を網羅しながらも、薬物治療と非薬物治療のハイブリット医療をハイレベルで行い、最先端の医療が提供できる体制となった。さらに院内では心臓外科、リハビリ部、院外では福岡市立こども病院とも連携を強化しました。
臨床研究では厚労省科研費研究「心筋症に関する調査研究」や心不全の全国レジストリであるJROADHF研究、JROADHF-NEXT研究を行い、出口戦略としての橋渡し研究であるAMED研究を精力的に推し進めた。また、九州大学循環器内科の伝統である心不全、脳-心臓連関、血管分子生物学、肺高血圧の基礎研究も若手・中堅の研究者の活躍で発展しました。