診療グループ Expert team

診療 Treatment

肺高血圧・静脈血栓

肺高血圧症とは

肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が異常に高くなる病気です。これにより、心臓に負担がかかり、息切れ、疲労感、足のむくみ、失神などの症状が現れることがあります。肺高血圧の病態はいくつかのタイプに分類されます。

前毛細血管性
肺動脈の血管抵抗が上昇して血流が流れにくくなっている状態
後毛細血管性
左心不全によって左室内圧が上昇し肺血流がうっ滞する状態
高心拍出性
過剰な心拍出量に伴って生じる

また、肺高血圧の原因はいくつかのタイプに分類されます。

第1群肺高血圧
肺細動脈の狭小化(肺動脈性)による肺高血圧症で、遺伝、薬物毒物誘発性、結合組織病、先天性短絡性心疾患、HIVに伴う。
第2群肺高血圧
左心不全に伴う。
第3群肺高血圧
肺疾患、低酸素血症に伴う。
第4群肺高血圧
慢性血栓塞栓性肺高血圧症や大動脈血管炎。
第5群肺高血圧
原因不明、その他。

肺高血圧症を見つけた場合、どのような病態で原因が何かを突き止めることが治療を行う上で重要です。

(ESC/ERS guideline 2022より)

深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症

静脈血栓症のうち、下肢深部静脈に発生する血栓症を下肢深部静脈血栓症といい、遊離した血栓が肺動脈に塞栓した状態を肺血栓塞栓症と呼びます。総称して静脈血栓塞栓症ということもあります。肺血栓塞栓症は呼吸不全、突然死の原因となり、致死的疾患ですが、近年、高齢化や担癌患者の増加に伴い肺血栓塞栓症の発生件数は増加しています。肺高血圧・静脈血栓症グループでは九州大学病院内で発生する静脈血栓症を他科と連携して横断的に診療しています。

肺血栓塞栓症は年々増加している

下肢血栓後症候群と慢性血栓塞栓性肺高血圧症

下肢深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症で発生した新鮮血栓は適切な治療により50%で完全溶解しますが、完全溶解が得られない(図:器質化血栓)ことがあり、下肢血栓後症候群や慢性血栓塞栓性肺高血圧症に進展することがあります。重度の場合、下肢血栓後症候群では下腿浮腫や下肢跛行、皮膚潰瘍、色素沈着、皮膚硬化などがみられ、慢性血栓塞栓性肺高血圧症では息切れ、呼吸不全、心不全の原因となります。静脈血栓症は急性期の適切な治療に加えて、慢性期の血栓不完全溶解に対するトータルマネジメントが必要となります。肺高血圧・静脈血栓症グループでは薬物療法に加えて、圧迫療法、経皮的カテーテルインターベンション、外科的血栓内膜摘除術まで包括的な治療を提供しています。

肺動脈性肺高血圧症

肺動脈性肺高血圧症は第1群肺高血圧で前毛細血管性肺高血圧です。BMPR2などの遺伝子が関与している場合もあり、血縁者での発症もみられることがあります。当グループでは遺伝子検査も積極的に実施しています。このほか、結合組織病やHIV、短絡性心疾患などによっておこる2次性に対しては原因疾患の治療を行いながら、肺高血圧症の診断治療を行います。肺血管拡張薬(エンドセリン拮抗薬、PDE5阻害薬、可用性GC刺激薬、プロスタサイクリン誘導体)に加え、アクチビンシグナル阻害薬などの血管細胞調整薬が上市間近となっており、当グループでは先行してこれら治験にも参加しています。

間質性肺疾患に伴う肺高血圧症

間質性肺疾患に伴う肺高血圧症は患者数が多いにも関わらず、治療法がなく予後不良の疾患でした。2021年にトレプロスチニル吸入薬が運動耐容能を改善する薬剤としてその有効性・安全性が確認され、2024年10月に本邦でもこの薬剤が承認されています。当グループでは呼吸器内科と連携して、間質性肺疾患に伴う肺高血圧に対する診断、治療を積極的に行っています。

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