研究グループ

高血圧・循環調節

高血圧・循環調節グループでは、高血圧や心不全の病態に大きく関わる神経体液性調節の基礎研究を多面的に行っています。特に、脳-末梢臓器連関の研究を通して、高血圧および心不全の発症・進展機序を解明し、調節系をターゲットにした新規治療開発を目指しています。臨床では、高血圧に対する腎デナベーション治験や、多施設RCTのサブ解析を含む臨床研究も行っています。

主な研究プロジェクト

脳内レニン・アンジオテンシン系による循環制御に関する研究

高血圧および心不全の発症・進展に交感神経活動亢進が重要な役割を果たしています。レニン・アンジオテンシン系は脳内にも存在し、循環調節に関わる脳神経核のAT1受容体の活性化によって交感神経活動亢進が引き起こされます。我々は、高血圧、高血圧性心臓病、心不全における末梢(心臓や循環血液)と脳内レニン・アンジオテンシン系との連関に着目し循環制御研究を進めています。

  1. Shinohara K, Nakagawa P, Gomez J, Morgan DA, Littlejohn NK, Folchert MD, Weidemann BJ, Liu X, Walsh SA, Ponto LL, Rahmouni K, Grobe JL, Sigmund CD. Selective deletion of renin-b in the brain alters drinking and metabolism. Hypertension. 70(5):990-997, 2017.
  2. Shinohara K, Liu X, Morgan DA, Davis DR, Sequeira-Lopez ML, Cassell MD, Grobe JL, Rahmouni K, Sigmund CD. Selective deletion of the brain-specific isoform of renin causes neurogenic hypertension. Hypertension. 68(6):1385-92, 2016.
  3. Shinohara K, Kishi T, Hirooka Y, Sunagawa K. Circulating angiotensin II deteriorates left ventricular function with sympathoexcitation via brain angiotensin II receptor.Physiol Rep.3(8): e12514, 2015.

がんによる心機能低下やカヘキシー進展における脳内ミクログリアの役割に関する研究

がんの進行に伴い、食思低下や筋萎縮などの多臓器障害をきたすカヘキシーの状態となります。がんカヘキシーの予後は不良であるにもかかわらず、その病態の詳細は不明な点が多く、有効な治療法は確立されていません。がんカヘキシーは慢性的な全身炎症の状態といえ、全身炎症は脳内ミクログリアを介して脳内炎症を引き起こすことが知られています。脳内炎症が交感神経系や摂食・代謝の調節に関与することが示唆されていることから、我々はがんによる心機能低下やカヘキシー進展における脳内ミクログリアの役割に関する研究を進めています。

高血圧・心不全における腎デナベーション治療機序に関する研究

腎交感神経を除神経する腎デナベーション治療が、高血圧や心不全を含む循環器疾患に対して有効であることが期待されていますが、その治療機序は十分に解明されていません。腎交感神経は求心路と遠心路から成り、求心路の除神経は脳を介して全身の交感神経出力を抑制する可能性があります。我々は、高血圧や心不全における腎交感神経求心路の役割に着目し、腎デナベーション治療機序の解明に取り組んでいます。

Katsurada K, Shinohara K, Aoki J, Nanto S, Kario K. Renal denervation: basic and clinical evidence. Hypertens Res. 45(2):198-209, 2022.

心肥大における心脳連関を介した交感神経活性化機序に関する研究

心肥大の進行と交感神経出力増加は相関しており、交感神経出力の増加が主に心臓βアドレナリン受容体刺激を介して心肥大をもたらすことはよく知られていますが、心肥大において交感神経出力が増加する機序は解明されていません。我々は心臓求心性交感神経ならびにその入力を受ける脳での交感神経出力調節に着目し、心肥大における心脳連関を介した交感神経活性化機序の解明を行っています。

 
Shibata R, Shinohara K, Ikeda S, Iyonaga T, Mastuura T, Kashihara S, Ito K, Kishi T, Hirooka Y, Tsutsui H.
Transient receptor potential vanilloid 1-expressing cardiac afferent nerves may contribute to cardiac hypertrophy in accompany with an increased expression of brain-derived neurotrophic factor within nucleus tractus solitarius in a pressure overload model. Clin Exp Hypertens. 44(3):249-257, 2022.

高血圧の発症・進展における脳血管周囲マクロファージの役割に関する研究

高血圧の患者・モデル動物において血中の炎症性サイトカインが上昇しており、高血圧と全身慢性炎症の関連が示唆されています。血液脳関門に存在する脳血管周囲マクロファージは、血中サイトカインをモニターし脳実質へ末梢の炎症情報を伝達することで神経体液性因子の活性化を引き起こします。我々は脳血管周囲マクロファージが交感神経活性化を介した高血圧症の発症・進展に寄与することを報告しました。
本研究論文は、第11回Hypertension Research Award再優秀賞に選ばれました。

 

Iyonaga T, Shinohara K, Matsuura T, Hirooka Y, Tsutsui H. Brain perivascular macrophages contribute to the development of hypertension in stroke-prone spontaneously hypertensive rats. Hypertens Res. 43(2):99-110, 2020.

妊娠高血圧腎症の既往と食塩感受性に関する研究

妊娠高血圧腎症の妊娠中における血圧上昇は出産後に正常化するにもかかわらず、妊娠高血圧腎症の既往は将来の高血圧および心血管疾患発症のリスクを高めます。本症の既往女性は食塩感受性が亢進していますが、その機序は不明です。我々は妊娠高血圧腎症モデルを用いて、出産後における脳での過剰なバソプレシン産生および分泌が食塩摂取による血圧上昇に寄与していることを明らかにしました。

 

Matsuura T, Shinohara K, Iyonaga T, Hirooka Y, Tsutsui H. Prior exposure to placental ischemia causes increased salt sensitivity of blood pressure via vasopressin production and secretion in postpartum rats. J Hypertens. 37(8):1657-1667, 2019.

治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーションの臨床研究

治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーションの臨床研究であるREQUIRE試験(多施設RCT)に参加し、超音波システムを用いた新規治療デバイスの有用性・安全性を検討しました。引き続き、臨床導入のためのさらなる知見の蓄積が期待されます。

Kario K, Yokoi Y, Okamura K, Fujihara M, Ogoyama Y, Yamamoto E, Urata H, Cho JM, Kim CJ, Choi SH, Shinohara K, Mukai Y, Ikemoto T, Nakamura M, Seki S, Matoba S, Shibata Y, Sugawara S, Yumoto K, Tamura K, Yoshihara F, Nakamura S, Kang WC, Shibasaki T, Dote K, Yokoi H, Matsuo A, Fujita H, Takahashi T, Kang HJ, Sakata Y, Horie K, Inoue N, Sasaki KI, Ueno T, Tomita H, Morino Y, Nojima Y, Kim CJ, Matsumoto T, Kai H, Nanto S.
Catheter-based ultrasound renal denervation in patients with resistant hypertension: the randomized, controlled REQUIRE trial. Hypertens Res. 45(2):221-231, 2022.

循環指標やバイオマーカーなどに着目したデータベースを用いた臨床研究

多施設RCTや健診、レジストリのデータベースなどを活用し、心血管イベントのリスク評価や予測モデル開発を目指した臨床研究を行っています。

  1. Ikeda S, Shinohara K, Enzan N, Matsushima S, Tohyama T, Funakoshi K, Kishimoto J, Itoh H, Komuro I, Tsutsui H.
    Serial measurement of B-type natriuretic peptide and future cardiovascular events in patients with type 2 diabetes mellitus without known cardiovascular disease. Int J Cardiol. In press.
  2. Shinohara K, Ikeda S, Enzan N, Matsushima S, Tohyama T, Funakoshi K, Kishimoto J, Itoh H, Komuro I, Tsutsui H.
    Efficacy of intensive lipid-lowering therapy with statin stratified by blood pressure levels in patients with type 2 diabetes mellitus and retinopathy: insight from the EMPATHY study. Hypertens Res. 44(12):1606-1616, 2021.
  3. Ikeda S, Shinohara K, Enzan N, Matsushima S, Tohyama T, Funakoshi K, Kishimoto J, Itoh H, Komuro I, Tsutsui H.
    Effectiveness of statin intensive therapy in type 2 diabetes mellitus with high visit-to-visit blood pressure variability. J Hypertens. 39(7):1435-1443, 2021.