診療グループ

肺高血圧症

肺高血圧症グループの診療

2012年に肺高血圧症専門外来を開設して以降、県内・県外から年間200名近くの患者を診療し、当院は九州・中国地方における肺高血圧症の拠点施設となっています。肺高血圧症のうち、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は国の指定する難病に指定されており、非常に予後の悪い疾患でしたが、この10年の間にPAHに対する多数の薬物治療が次々と開発され、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)が行われるようになり、治療成績が劇的に改善しました。これらの治療の進歩はPAH、CTEPH患者さんにとって大きな福音となっています。PAHやCTEPHは希少疾患と呼ばれ、患者さんの数が少ないため、薬物療法や非薬物療法いずれも一般的ではないため治療経験の豊富な医療機関での治療が望まれます。

当院では医師・看護師・薬剤師・理学療法士・地域連携室とPHチームを結成し包括的でシームレスな医療を提供しています。

また、肺高血圧症に対する新たな治療の確立のために、全国規模で行われている治験、臨床研究にも参加しております。

細川 和也・阿部 弘太郎

現在進行中の主要な治験・臨床研究

  • 肺高血圧症に対する症例登録研究(Japan PHレジストリ)
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術の治療効果に関する多施設無作為化臨床研究(MRBPA研究)
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するballoon pulmonary angioplastyの有効性と安全性に関するレジストリ(J-BPAレジストリ)
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症を対象としたセレキシパグの有効性及び安全性の検証試験(セレキシパグ適応拡大治験)

*治験・臨床研究への参加をご希望の方は担当医までご相談ください。

お問い合わせ

外来予約:初診専用予約センター 092-642-5508 

受付時間 9:00-16:00(平日のみ)

循環器内科肺高血圧症専門外来初診日:月曜日、火曜日、木曜日

転院相談: 092-641-1151(代表)循環器内科の病棟医長をお呼び出しください

医療機関専用の相談アドレス(お返事には数日を要しますので緊急時には上記へご連絡ください)

PAH@junnai.org

※このメールアドレスは医療機関専用です。患者様からの診療内容の問い合わせにはお答えできません(インターネット上では診療はできませんので個人的な治療の相談等の診療行為にあたるような内容はお答えを差し控えさせていただきます)。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する非経口薬物治療について

当院には肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者さんが数多く通院(200名/年)しており、PAHに対して積極的に最新治療を導入しているほか、治験(新たな薬剤の効果を確かめるために行う、厚生労働省の許可を得て行う試験)にも参加し、新たな治療薬が早く患者さんに使えるよう協力しています。近年、様々な治療薬が開発されていますが、経口薬のみでは対処できない重症の患者さんに対しては、非経口薬を用いることもあります。

当院のPAHを含む肺高血圧症の紹介患者数

肺動脈性肺高血圧症(PAH)とは

PAHは全国で2500人程度の患者数の比較的まれな疾患です。本疾患は肺動脈が何らかの原因で狭窄して肺動脈の血流が流れにくくなっていることが原因です。息切れ、呼吸困難、むくみ、重症になると失神したり、突然死することもあります。本疾患の原因はいまだ不明な点も多いのですが、遺伝的要因、薬剤によるもの、肝臓疾患、先天性心疾患など原因が判明しているものも存在しています。治療法としては肺血管を拡張させるお薬で血流を改善させるほか、酸素投与やむくみを取るための利尿薬などが行われます。本疾患に対するお薬には内服治療で効果が不十分と判断される場合、プロスタサイクリン(エポプロステノール、トレプロスチニル)の持続点滴、皮下注射を併用することが必要になることがあり、当院でじっししております。また、厚生労働省が指定する指定難病のうちの一つであり、特定疾患として認定を受けた場合、本疾患に対する医療費が軽減されます。

 

エポプロステノール持続静脈内投与

エポプロステノールはプロスタサイクリン誘導体の注射剤で肺血管拡張薬としては最も効果の高い薬剤として使用されています。ただし本薬剤は持続的に血管内に投与する必要があり、血管内にカテーテルを留置して、在宅でのポンプを使った投与が必要となります。特に重症の患者さんには本薬剤が必須であり、当院では3人/年程度の導入を行っております。

アクテリオン ファーマシューティカルズジャパン株式会社ホームページより引用

 

トレプロスチニル持続皮下投与

トレプロスチニルはプロスタサイクリン誘導体の注射剤で、エポプロステノールと比べて、消失半減期が長く、安定した製材として開発された医薬品です。そのため、静脈内投与のほか、持続皮下投与が可能です。治験では6分間歩行距離の改善と肺血管抵抗の改善が確認され、本邦においては2014年3月に製造販売承認されました。当院では承認同年から導入しております。本薬剤の導入には投与部位の疼痛が問題となることがありますが、これまでの経験をもとに、スムーズな導入を行うことができています。

持田製薬株式会社作成「なるほど!!トレプロスト」より引用

 

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する包括的治療について

当院はCTEPHに対して、1.薬物治療、2.経皮的バルーン肺動脈形成術(BPA)、3.外科的血栓内膜摘除術の3つの治療すべてが可能な、日本でも数少ない施設の一つです。BPAは2012年に導入して以降、その治療効果と低侵襲性における優位性から、数多くの患者さんが紹介され、治療件数(右図)は激増しております。2017年には日本循環器学会から国内主要施設に認定されております。外科的肺動脈血栓内膜摘除術は2016年より当院心臓血管外科で導入され、現在まで4例で施行し、いずれも良好な経過で退院しています。

CTEPHとは

CTEPHは全国で3000人程度(300人/年発症)の患者数の、比較的まれな疾患です。本疾患は肺動脈が器質化した血栓によって多数閉塞したり、狭窄して肺動脈の血流が流れにくくなっていることが原因です。息切れ、呼吸困難、むくみ、重症になると失神したり、突然死することもあります。器質化した血栓はお薬で溶かすことはできないので、血液をサラサラにするお薬で新たな血栓ができるのを予防したり、肺血管を拡張させるお薬で血流を改善させる治療が行われますが、それだけでは根本的な治療にはなりません。本疾患に対しては薬物療法以外に以下の治療法があり、当院で実施しています。また、厚生労働省が指定する指定難病のうちの一つであり、特定疾患として認定を受けた場合、本疾患に対する医療費が軽減されます。

経皮的バルーン肺動脈形成術BPA

当院は最先端の治療であるバルーン肺動脈形成術を行っております。バルーン肺動脈形成術の認定実施施設(日本循環器学会)は国内で10施設程度に限られており、北部九州および近隣地域の慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者は九州大学病院に多く集まっています。

当院でのBPA件数

外科的肺動脈血栓内膜摘除術

血栓内膜摘除術の摘出標本(外科的によって摘出された肺動脈内膜と器質化した血栓)

当院は中枢型慢性血栓塞栓性に対する血栓内膜摘除術が行える数少ない施設でもあり、バルーン肺動脈形成術と血栓内膜摘除術を組み合わせることですべての慢性血栓塞栓性肺高血圧症の患者さんを治療することができます。

 

診療に関連した業績

  1. Hosokawa K., Abe K, Oi K., Mukai Y., Hirooka Y., Sunagawa K. Negative acute hemodynamic response to balloon pulmonary angioplasty does not predicate the long-term outcome in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Int J Cardiol. 188:81-3, 2015.
  2. Hosokawa K., Abe K, Oi K., Mukai Y., Hirooka Y., Sunagawa K. Balloon pulmonary angioplasty-related complications and therapeutic strategy in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Int J Cardiol.  197:224-226, 2015.
  3. Horimoto K, Abe K, Ohtani K, Takahara Y , Hosokawa K, Oi K, Mukai Y, Kubo T, Matoba T, Tsutsui H. Optical Frequency Domain Imaging of Covered Stent-Graft for Pulmonary Artery Pseudoaneurysm after Balloon Pulmonary Angioplasty. JACC Cardiovasc Interv. S1936-8798(16)31346-2. 2016.
  4. Hosokawa K, Yamamoto T, Abe K, Tsutsui H. Delayed-onset Lung Injury After Balloon Pulmonary Angioplasty. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2017, in press.
  5. Kawakubo M, Akamine H, Yamasaki Y, Takemura A, Abe K, Hosokawa K, Morishita J, Nagao M. Three-dimensional phase contrast magnetic resonance imaging validated to assess pulmonary artery flow in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Radiol Phys Techno. 2017 10(2):249-255.
  6. Nagao M, Yamasaki Y, Abe K, Hosokawa K, Kawanami S, Kamitani T, Yamanouchi Y, Yabuuchi H, Fukushima K, Honda H. Energy efficiency and pulmonary artery flow after balloon pulmonary angioplasty for inoperable, chronic thromboembolic pulmonary hypertension: Analysis by phase-contrast MRI.  European Journal of Radiology. 87:99-104, 2017.
  7. Yamasaki Y, Nagao M, Abe K, Hosokawa K, Kawanami S, Kamitani T, Yamanouchi T, Horimoto K, Yabuuchi H, Honda H. Balloon pulmonary angioplasty improves interventricular dyssynchrony in patients with inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension: a cardiac MR imaging study. Int J Cardiovasc Imaging. 33(2):229-239, 2017.
  8. Kodama Y, Abe K, Hosokawa K, Ohtani K, Nagao M, Hirooka Y, Sunagawa K. Reversal of diffuse patchy pattern in lung perfusion scan in a case of severe pulmonary arterial hypertension. Heart Lung. 44(5):451-2, 2015
  9. Miyake R., Fujino T., Abe K, Hosokawa K., Ohtani K., Morisaki H., Yamada O., Higo T., Ide T. Pulmonary Arterial Hypertension Associated with Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia Successfully Treated with Sildenafil. Int J Cardiol. 214:275-6, 2016.
  10. Watanabe N, Abe K, Horimoto K, Hosokawa K, Ohtani K, Tsutsui H. Subcutaneous Treprostinil was Effective and Tolerable in a Patient with Severe Pulmonary Hypertension Associated with Chronic Kidney Disease on Hemodialysis.  Heart Lung, 46(2):129-130. 2017.
  11. Maruoka Y, Nagao M, Baba S, Isoda T, Kitamura Y, Yamazaki Y, Abe K, Sasaki M, Abe K, Honda H. Three-dimensional fractal analysis of 99mTc-MAA SPECT images in chronic thromboembolic pulmonary hypertension for evaluation of response to balloon pulmonary angioplasty: association with pulmonary arterial pressure. Nucl Med Commun. 2017, in press.
  12. Hosokawa K, Abe K, Kashihara S, Tsutsui H. 3-Dimensional SPECT/CT Fusion Imaging Guided Balloon Pulmonary Angioplasty for Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. JACC Cardiovasc Interv. 2017, in press.
  13. Tamura Y, Kumamaru H, Satoh T, Miyata H, Ogawa A, Tanabe N, Hatano M, Yao A, Abe K, Tsujino I, Fukuda K, Kimura H, Kuwana M, Matsubara H, Tatsumi K; Japan PH Registry (JAPHR) Network. Effectiveness and Outcome of Pulmonary Arterial Hypertension-Specific Therapy in Japanese Patients With Pulmonary Arterial Hypertension.  Circ J. 25;82(1):275-282. 2017.
  14. Hosokawa K, Abe K, Horimoto K, Yamasaki Y, Nagao M, Tsutsui H. Balloon Pulmonary Angioplasty Relieves Hemodynamic Stress towards Untreated-Side Pulmonary Vasculature and Ameliorates Its Resistance in Patients with Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. EuroIntervention. 2018, in press.

 

ガイドライン作成など

肺静脈閉塞症(PVOD)肺毛細血管腫症(PCH)診療ガイドライン

監修:日本肺高血圧・肺循環学会

統括委員:千葉大学 呼吸器科 巽 浩一郎

九州大学 循環器内科 阿部弘太郎 委員として参画

 

肺高血圧症治療ガイドライン(2018年改訂版)

監修:日本循環器学会

主査:慶応義塾大学 循環器内科 福田 恵一

九州大学 循環器内科 阿部弘太郎 委員として参画